「デキルコト」



ある日、自分より若い者に
「今日は調子悪いのか?」
「何故アタックに反応しないの?」
と聞いたら、
「今日は自分の日じゃないス」
「アタックの掛かる場所が早過ぎて…(おそらく展開的に)」
と返ってきた。

その若者の目標は「プロ」らしい。

少しだが言ってみる。
「それがロードレースというモノなんじゃないか?」
「自分の日じゃないなら、日じゃないなりに足掻いても良いんじゃないか?」

若者は、
「そうですよね」
「足掻いてます、精一杯で走ってるんですけど、あれ以上速くはできませんでした」


因みに、そのアタックを起こしたのも
もう1人の若者で少年、
その少年は登りの入り口から飛ぶようにアタックして後半に掛けてタレてはくるが粘りと、入口のアタックで稼いだアドバンテージで見事逃げ切り頂上フェニッシュ。
もちろん頂上に着いた時はフラフラ。
これは良い状態でしょう。

そして数分遅れてやってくる若者、
顔は少年に比べれば涼しげで
フォームも乱れていない。

ぼくは彼の動きに反応しなかった理由は
「気持ち」だと思うんだよなぁ。

本当に体調は良く無かったのかもしれない、本人が言う以上は否定しない。

けどペースが緩やかな時に
顔を出してくるのは、もうそれは体調が悪いとかじゃないだろう。

気を使ったか?少し牽かないとって?
登りで発揮できなかった分、いま頑張ります、か?
 

その遠慮はレースという場や
目標にしてる場所に向かう過程で
邪魔になるぜ、きっと。

そんなのいらねえぞ。

もっと違う所で頑張れ。

もし本当に「プロ」を目指すならさ。

ぼくはプロになった事が無いから
ひょっとしたら間違いかもしれないけど。

そんなぼくに言われるんだから
尺だろう、なら黙らせてみてくれよ。

その日、自分がレースで逃げたいなら
アタックにはいつでも反応できるよう
備えておくべきだぜ。

逃げたいと考えていなくても、
その動きが勝負に関わってきたり、
決定的なモノだったら自分の感情より
「反応するコト」が優先だぜ。

しんどいからヤだな〜は誰もが思う。
それを反応しない理由にして走る人は
プロには居ないんじゃないかな。

それ程、事務的な作業として自転車を走らせる事ができるかで「価値」を付けてもらえるとぼくは思ってる。

次があるから頑張るクセが付かない、
次、次と思っていたらあっという間に
人生終わっちゃうだろう。

一緒に走っていてその若者は、
十分に力があるんだ。

しかも「若者」。
その荒削りな力で
沢山失敗できるという特権。

研いでいけば荒削りでは無くなる、
荒いのが強み、色が決まってないのが強み。

今は何か失うのを恐れた走り。

イケイケなボンバーになれよ、今すぐ。
答えは自分の中にしか無いぜ。

そして早く引きずり倒してくれ、
ぼくが練習相手に困らなくなるからさ。